敗血症診断マーカー パスファーストPresepsin
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メディカルレポートvol.1

遠藤重厚先生に聞く新しい敗血症マーカー プレセプシン
02.敗血症症例におけるプレセプシン値の
動きの特長を教えて頂けますか?

熱傷、外傷、侵襲の大きい外科手術等の初期の炎症の影響を受けないという特長があります。また従来の敗血症マーカーよりも早期に上昇するという印象を持っています。我々の施設で経験した症例を中心に、プレセプシンの特長について解説します。

症例1 多発外傷症例  男性アイコン10歳代男性
症例1 図

来院時は、既にSIRS状態でしたが、その後感染もなく(血液培養も創部培養も陰性で推移)、順調に退院となった症例です。来院時のプレセプシンは250pg/mLと低値を示し、来院7日目までの測定値の大きな変動は認められませんでした。一方、PCT、IL-6、CRPは外傷の影響で来院初期に感染を伴っていなくても高値を示し、7日目まで測定値が低下する傾向にありました。
このように従来の炎症性マーカーは、感染がなくとも炎症を反映した高値を示すことがあり、感染による高値と区別して考える必要がありました。プレセプシンの場合はこのようなことがなく、病態の推移をみる上で悩むことが少ないと言えるでしょう。

症例2 重症熱傷症例1  男性アイコン20歳代男性
症例2 図

来院6日目に血液培養で緑膿菌が検出され敗血症に移行、9日目に重症敗血症になった症例です。来院時のプレセプシンは120pg/mLと低値を示し、感染を合併していないSIRSの病態期には測定値の変動は認められず、血液培養が陽性になると共にプレセプシン値はカットオフの500pg/mLを超え、重症化と共に上昇する傾向が認められました。一方、PCT、IL-6、CRP、白血球数は感染を合併していないSIRSの病態期でも一過性に測定値の上昇が認められ、来院8日目の敗血症発症時に再び測定値の上昇が認められました。
また、プレセプシンは来院6日目の敗血症発症翌日の7日目に高値となっているのに対し、PCTとIL-6は8日目、CRPと白血球数は9日目に測定値の上昇が認められたことから、プレセプシンは他のマーカーより早期に検出されました。この症例検討のように毎日測定を行えば従来マーカーでも下降しているのか上昇しているのかわかるのですが、プレセプシンの場合、その点を考慮する必要がないことが特長と言えます。その後、重症敗血症への移行に伴い、プレセプシンの上昇が見てとれます。

症例3 重症熱傷症例2  男性アイコン50歳代男性
症例3 図

来院5日目に血液培養で菌が検出され敗血症に移行した症例です。来院時のプレセプシン値は281pg/mLと低値を示し、5日目に掛けて徐々に測定値が上昇、敗血症発症前日の4日目にカットオフの500pg/mLを超える高値となりました。一方、PCTは感染を合併していないSIRSの病態期で一過性に測定値の上昇が認められ、敗血症発症後の来院10日目にカットオフの0.5ng/mLを超え高値となりました。
注目するのは、プレセプシンが来院3日目で既にわずかながらカットオフの500pg/mLを超えている点です。おそらくこの時点で感染が始まっていたのではないかと推定することができ、プレセプシンが感染をより早期にとらえている可能性を示唆するものでした。

症例4 低体温症例  女性アイコン80歳代女性
症例4 図

低体温症で入院し、当初からショック状態、来院4日目に敗血症性ショックとなりましたが、治療によりショック状態、敗血症を離脱した症例です。最初のショック時には、白血球、CRPは高値を示していますが、プレセプシンは400pg/mL付近で推移し、局所あるいは弱い感染を示唆する所見でした。来院4日目に敗血症性ショックと診断した時には、プレセプシンはカットオフを超える高値を示しましたが、CRPや白血球は翌日臨床症状が治まってからピークを示しております。
この症例が来院4日目に敗血症性ショックであったことは、血液培養によりAcinetobacterが検出されたこと、血中エンドトキシンが高値を示したことからも確認できました。
 このように、体温、白血球数、CRPはいずれも敗血症性ショック移行前に一時的に低下しているのに対し、プレセプシンは敗血症性ショック前も継続して上昇傾向にあったことから、プレセプシンの頻回測定により患者の病態を的確に把握でき、さらに敗血症発症のタイミングがタイムリーに検出可能であることが示唆されました。

報告例 敗血症患者の経過観察に対する報告

プレセプシンにより的確な臨床経過の把握が可能であることについてご説明します。

多施設臨床試験で登録された重症敗血症患者(SOFAスコア5以上)を対象に、来院7日目のSOFAスコアが来院時に対し50%未満になった群をSOFA経過良好群(n=27)、50%以上であった群を経過不良群(n=26)としました。プレセプシン、PCT、CRP及びIL-6の来院時、3日目、7日目の血中濃度推移を下に示します。両群において、来院時の各マーカーの測定値に有意差はありませんでした。SOFA経過良好群の各マーカーの測定値は、いずれも来院時から7日目にかけて有意に低下していました。一方で、SOFA経過不良群においてはプレセプシンのみが来院時から7日目にかけて有意な値の低下が認められませんでしたが、他のマーカーは経過不良群でも低下していく傾向が見られました。このことからプレセプシンは敗血症患者の病態をより反映していたものと考えられます。

  • プレセプシン
    プレセプシン
  • PCT
    PCT
  • IL-6
    IL-6
  • CRP
    CRP